オーディオのアースの最適化に取り組んでいました。
基本的な考え方
「アースする」というと、「機器をアースしなければならない」と考えることになるのですが、すると数々の矛盾にぶつかることになると思います。
そこで当サイトでは目線を「機器」ではなく「信号」に置き換え、「信号は機器(シャーシ)でアースされている」という立場を取っています。
アース線、端子台/コネクタを利用していますが、それらを用いて各機器の電位を一致させるため、アースに電気が流れないように配線を行います。
※)”接地”(大地へのアース接続)は保安/事故防止の面では必要ですが、ノイズの抑制には寄与しないと思います。特に日本の100V環境では接地接続がむしろノイズ源になってしまうケースが多く、”保安のためのアース”と”信号品質のためのアース”は天秤にかけなければならない事情があると思います。
常識とは真逆のように思われますが、漏電や静電気放電以外でアースに電気が流れている場合、そこに電位差が発生し、いわゆる「機能アース」(電位を一致させるためのアース)に不備が生じていることを意味しており、アース電位の一致はすなわち、「アースに電気を流さない」ということになる・・・
後述してありますが、アンバランス接続はGNDに電気が流れるからこそ、接地もしくはシャーシアースを取ると不具合を生じるという事を考慮してもらうと理解の一助になるかと思います。
※)デジタル機器の場合「周波数が高いので流れざるを得ない」という事情がありますが、その場合にとられる手法が”低インピーダンス化”いわゆる「太く短く」「ベタアース」というものです。このことから、アナログ機器とデジタル機器ではノイズ抑制のためのGNDの扱いは異なったものになってきます。
"〜筐体アースは「ポテンシャル(電位)を決めるアース」であって、「電流を流すアース」ではない〜"
"〜アース線には電流を流してはいけない〜"
伊藤健一 著「アース回路」より
〜〜 アースを取る前に 〜〜
① アースを切る
いきなり逆説的ですが、この”切るアース”は日本のコンセント特有の片線アースです。
”必要なアース"は機器のシャーシ(筐体)です。なおアース工事で3ピンのコンセントになっている場合も、接地極は使用しませんので、アース工事は不要です。むしろコンセントの接地極は使用するとノイズを増やすことになりかねません。
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※)参照記事 コンセントのアースの是非
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使用機材のうち、2ピンの電源プラグの電源線が機器のシャーシまで来ている場合、プラグ側にフェライトコアを入れます。ここがシステムを揺らすノイズの入り口になります。
あまり重要視されていないようですがフェライトコアは使い方によっては絶縁トランスと似た効果を出すことができます。
尚、すでに絶縁トランスを使用されている方はこの手順は不要です。
詳しくはBlogの方に書いています。
※必要なもの・・フェライトコア+検電ドライバー(逆配線コンセントのチェックの為)
"日本のAC100V系の配線方法は〜片線アース方式になっている。この片線アース方式は電子機器にとっては致命的ともいえるほど耐ノイズ性を劣化させる原因なのである。特にコモンモードノイズと言われる雑音に対してはきわめてまずい接地方式なのである。"
伊藤健一 著「アースと静電気」より
② 周辺機器のアンテナ化を避ける
システムに無線接続(Wi-Fi/Bluetooth)がある場合、無線機器は全接続を外し、無線接続を済ませた後に有線接続を行うことでノイズが電源、信号に乗る事を避けられます。
Wi-Fi,BluetoothがONになるタイミングによってはシステム全体にノイズとして乗ってきてしまいます。
こちらは電源トランスであっても守備範囲外の事案と思います。
参照 Blog
・アンバランス接続機器のアースについて

前提として使用機器は全て筐体アースしたいのですが、機器間接続にRCA端子、TSフォーン、同軸ケーブルなどのアンバランス系統(例えばレコードプレーヤーなど)がある場合、グラウンドループに対処が必要になります。
アンバランス接続はグラウンド(GND)に電流が流れますので、対処なしでシャーシからアースを取ろうとすると逆効果になります。
通常、アンバランス接続を主体とした機器、レコードプレーヤーやプリメインアンプなどは2ピンの電源プラグであり、信号線のGND(シグナルグラウンド/SG)のみで接続先機器との電位を一致させます。
アンバランスはマイナスとGNDが兼用ですので、この場合GND(SG/シグナルグラウンド)にマイナス電流が流れます。
その上でFG(フレームグラウンド/シャーシアース)をとってしまうと電流が流れるループが形成されてしまうので、アンバランス主体の機器は基本的にFGを取らない仕様になっており、そのまま使うのが適正です。
「片方ならアースして良いのか?」など、アース問題がややこしいとされる理由はこれもかなりの比率を占めているように思います。
アナログ機器のアース(一点アース/Star Ground)


アナログ機器のアースはアース線同士を直接結ばないのがポイントです。機器の電源に接地極が無い場合は筐体(シャーシ)から取ります。
◆ アース端子の配列について
コネクタ/端子台の端から微弱信号の機器から順に並べていき、電源タップが3Pinであればその端子は最後に接続します。その際、上記のコネクタであれば全ての穴が埋まらなくとも、両端は必ず使用するようにする(※)と良いです。
※)この理由はよくわかっていないのですが、一点アースの場合、端子台の面積そのものより、面積利用率がその性能を左右するのではないか、と解釈しています。
信号の大小の判断は機器の定格消費電力を参照すると良いと思います。
機器本体とアース導通がないACアダプタで、シャーシからアースをとる場合は最も小さい扱いにして下さい。



該当する機器が複数ある場合はアダプタ本体に記載されているDC側のVA(ボルト×アンペア)の数値で大小を判断できます。ACプラグが2ピンの場合は機器とアース導通はないはずです。
また、ACアダプタではない2ピン電源の機器のシャーシからアースを取る場合はその限りではありませんので注意されて下さい。→
この場合は機器本体の消費電力を参照します。

上記の「導通なし」写真の一次側(AC側)のアースや、電源タップのアース端子は、信号を扱わないので、信号系の端子の間に割り込まないようにします。これらは浮いた金属を残さない為、シールド電源ケーブルであれば電磁シールドを成立させる為にアースするといった形になります。
注)アース配線後は電源プラグを、必ずタップ→機材1→機材2という感じで一つずつ挿して行って下さい。これも定格消費電力を参照し、大きい順に挿すと良いと思います。ACアダプタの機器はアダプタのAC入力側のアンペアを参照します。
◆ 一点アース

出典:伊藤健一 著 「イラストで読むアースとノイズの話」 日刊工業新聞社 刊
イラストでは機器の内部配線ですが、内部配線にとどまらず、(アナログ)機器同士のアース配線であっても同様と感じます。
注目点は、アース線同士が直接触れ合わず、アース棒(筐体/シャーシ)を介して間接的に接続されているという点です。
後述するデジタル機器のアース(ベタアース)と、一点アースはこの点に大きな違いがあります。
※)〜例えば3ピン電源の機材を3ピン電源タップに挿し、タップ→コンセントへは2ピンで挿すとほぼこれと同じ「一点アース」状態にできますが、機器に2ピン電源のものが含まれる場合はその機器のFGが一点アースにできず、アースが下駄を履いた状態/共通インピーダンスになりますので、一点アースを達成するにはアンバランス系統にグラウンドループ対処をしつつ2ピンの機器からもシャーシアースを取る必要があります。
2026/3/8 Update
◆ 一点アースと保護接地の両立に関するジレンマ
以上のアース配線はいわゆる「機能接地」としての最善を追求した結果なのですが、これを保安のための接地「保護接地」と両立させるとなると、上記の端子台/コネクタに対して行った配線を””規定の抵抗値(100Ω以下など)を満たした地面に接地されたアース棒に対して行わなければならない””ということになります。
これが一般的な環境において現実的ではないというのは想像に難くないと思います。「一点アースは理想論」という意見も保護接地との両立を前提とすれば妥当と思います。
機器間のアースをまとめた端子台から追加のアース線を引いて大地接続(接地コンセント経由)を行えば保護接地は達成できるのですが、そうなると端子台〜接地点までの配線が””追加された導体””として作用してしまい、一点アースをしたつもりの配線が”共通インピーダンス配線”という機能接地の目的と矛盾した配線に化けてしまうというのがここでいうジレンマです。
「一点アース」は共通インピーダンスを避けるための配線ですので、この場合「保護接地」の観点からはアースされているが、「機能接地」の観点からはアースから浮きあがっている、という状態になります。この点もいわゆる”アースの難問”とされる部分と言えると思います。
デジタル機器のアース(ベタアース※/Ground Plane)


※注)便宜上「ベタアース」という用語を使用していますが、本来はプリント基板の用語です。高周波GNDのインピーダンスを低くするためという意味では目的を同じくする事、また「一点アース」と区別するためにこの語を使用させて頂いています。この結線方法は一点アースではないことに留意されてください。
上の写真、左からの線はPC筐体(シャーシ)から引いたアース線、右からの線は電源タップのアースピンを浮かせてそこから引いたものです。
電源プラグは右からPCのACアダプタ(アース端子なし)、外付けHDD、AD/DAコンバータです。
こちらはアース線を直接結びます。
◆圧着端子を重ねる順番について
ここはなかなか法則が見つからなかったのですが、重要なのは重ね順の最後に電源タップのアース端子を一つ混ぜることのようです。
つまりデジタル機器のアース端子自体は重ねる順番を気にする必要はないと言えそうです。
※ なぜ接地しないのにアース端子付きのタップが必要なのかと言いますと、デジタル機器のアースはそれ同士でいくつ繋いでも高周波のアースなので、電源ライン(50/60Hz)からは浮いており、不要輻射ノイズの元になってしまうため、低周波のアースを必要とする。と言えます。
かといってアナログ機器のアース端子に接続すると信号にノイズが乗ってしまうので、”信号を扱わない低周波のアース”である電源タップのアース端子が最適、という次第です。
◆ 二次側と導通がない接地極付きACアダプタがある場合

このアース端子(AC側)は電源タップのアース線と同じく高周波のアースとして扱えないので、電源タップの圧着端子と重ね合わせるとノイズになります。
この場合は機器類がフルデジタルであってもアナログ側同様に端子台に相当するものが必要になります。

例として
・高周波デジタル機器(×3)
・シャーシと導通のないACアダプタのアース線
・電源タップのアース線
の場合です
圧着端子をデジタル機器(×3)→電源タップのアース端子→渡り線、の順で重ねて、渡り線とACアダプタのアースを端子台に繋げばOKです。

アース配線は以上です。
この手法の主眼は”機器の電位の安定化”です。「電子機器(エレクトロニクス)のアース」と保安、感電防止を目的とした「電力関係のアース」(接地)を別物と考えました。上記手法はいわゆる"仮想アース"と呼ばれているものに近いと思いますが、保安接地の観点からの仮想なのであって電子機器の観点からは仮想ではなく、リアルのアースと言えると思います。「飛行機や宇宙船のアースは?」ということを考えますと、答えは”筐体”すなわちボディです。つまり機器は完成した時にはアースされているのであって、ここで行っているのは"アースとアースをどう繋ぐのか"ということになります。
デジタル、アナログに関しては電子回路の考え方を参考にしています。アナログのアース結線を便宜上「一点アース」、デジタルの方は「ベタアース」(本来は回路パターンの用語)と呼びますが、これはアナログで避けるべきは「共通インピーダンス」、デジタルで避けるべきは「ストレーキャパシティ」(浮遊容量または寄生容量)であるという考えです。アナログでベタアース結線をすると共通インピーダンスが問題になり、デジタルで一点アースをするとストレーキャパシティが問題になってノイズになります。その意味では通常の3pinプラグを挿しての運用はどちらに対しても中途半端になっています。たとえば経験ある方もおられると思いますが、接地端子付き電源タップのアースピンだけをコンセントから浮かせて機器側は3pinでタップに接続すればそれだけで共通インピーダンスが減少するので、アナログ機器は良くなるはずです。
「アースするとは をなくすことなり!!」


