コンセントのアースの是非
- elecgnd
- 5月30日
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更新日:9月1日
電源プラグが3ピンの機器には「必ず接地してください」「適切なアースを」などの指示がされていますが、日本国内におけるアースコンセントの事情、特に”コンセント〜接地点までの経路”は考慮されているのか?という疑問があります。
日本の一般的なアース付きコンセントはアース極とマイナス極がテスターで導通が出る場合があります(B種接地とD種接地の共用)。
帰還電流がそのままアースに流れているわけではありませんが、コンセントから先の接地線がグラウンドループを形成していると言えます。
Update 2025/8/30
ただし、これは施工上の不備ではないようです。
~~ 以下、コンセントのマイナス(中性線/ニュートラル)は”N”
コンセントのアース(保護接地/プロテクティブアース)は”PE” として略します ~~
NとPEは分電盤のバスバーを通じて接続されており、NとPEの電位差を抑制することで漏電検知機能を確実にするための要件として法令上においても定められています。
しかしながら、Nにはもちろん屋内のその他電気製品の帰還電流が流れていますので、電子機器の接地端子をコンセントのPEを繋げば、分電盤を通じてNとも繋がる形になりますので、ノイズが乗って当然ともいえます。
もちろんこのコンセントで機器の接地はされますが、ノイズ対策上のアースとして有用とは思えません。
※200V(単相3線式)の場合はNがマイナス線ではなくなりますので、上記のような心配はないと思います。しかし、特にアナログオーディオの場合(ダウントランスは接地しなければなりませんが)、別の理由から機器のアースを接地に繋ぐことは避けた方が良いと思います。
※マイナスとアースの導通確認をしてみたい場合は、コンセント内のプラス極とマイナス極が逆に配線されている場合(3ピン接地コンセントなら大丈夫かとは思いますが、普通の2ピンコンセントでは特段珍しくはないと思います)、電源がショートしてブレーカーが落ちてしまいますので、必ずプラスとマイナスをテスターや検電ドライバーで確認した後にして下さい。
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いわゆる”接地”は「保護接地」と「機能接地」に大別されますが、
「保護接地」は人体と機器/系統の保安を目的とする。漏電などの事故が起きた際に大地に電流を逃すことで人体の保護や機器/系統の損傷防止を図るもの
「機能接地」は機器間や信号経路のアース電位を一致させてアースに電位差を作らないことで信号品質の向上、安定を目的とする。
「アースにノイズを流す」という言説は、これらが混同されています。
機器間のアースと接地点に電位差が存在せず、漏電も起きていないとすれば、アースに電気は流せないのではないでしょうか。必要としない周波数成分がノイズなのであって、ノイズ=漏電ではありません。余分な周波数成分をフィルタリングしたとしてもノイズを消費してくれるのは抵抗だけです。
※抵抗値が低いほど「優秀なアース」とされていますがあくまで保護接地として優秀なのであって、「ノイズを消費させる」というのであれば低い抵抗値を目指すのは矛盾しています。ノイズが流れやすくなっても、消えてはくれません。また、いわゆる”アースラインノイズフィルター”が効いたのであれば、そこに電気が流れてはいけないことを証明していると思います。
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というわけで、ノイズ対策の面からコンセントの接地を利用することはお勧めできません。
オーディオでコンセントのアースをとって”艶が出た”、”高域が伸びた”というかたは、おそらく他所のコンセントからの高周波(コモンモードノイズ)にさらされています。もしガマンして聴いている感覚(頭がキンキンしたり、顔がつっぱる、肩、首がこる、長時間聴いていられない、など)があるなら、接地を外してみるか、外せない環境ならアースラインノイズフィルターを入れることをお勧めします。
※ちなみにシステム内でデジタル機器とアナログ機器のアースが混在し、分離されていない場合も同様の症状が出ます。
保安上の懸念もあるかと思いますが、100Vでの運用である場合、現行の法令では、接地は義務ではなく省略可能です。下記が要件になります。
〜〜【電気設備の技術基準29条第2項】
一 交流の対地電圧が150V以下又は直流の使用電圧が300V以下の機械器具を、乾燥した場所に施設する場合
接地の義務は「水まわり」に限定されています(例として洗濯機の接地は義務化されているが、冷蔵庫や電子レンジは任意であると言えます)。
オーディオの場合、機能接地(音質)を犠牲にしてまで、保護接地を行う必要があるのか?ということになるのですが、現実的にはコンセント以降の接地経路をはじめとして、環境次第と思います。例えば野外コンサート会場などでは当然、保護接地は重要な役割を持ちます。